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アトピーでも快適に生きる ―デュピクセント・イブグリース等新薬を使って―

ライジン/田辺雷次郎(50代)

 

私が新薬でアトピー治療を始めたのが2020年の夏なので、ちょうど6年になります。

その間に使った新薬は、注射が2種類、飲み薬が2種類、塗り薬が3種類あります。

塗り薬は症状に応じてその都度使い分けていましたが、注射や飲み薬の新薬は毎回変えられるものではありません。その為、治療の「軸」を変更する事にはとても勇気と決断が必要でした。

 

〇薬を変更する決断

変更をためらった理由は、副作用が出るかもしれないことや、効き始めるまでに体調が不安定になるかもしれないこと、変更によってできるかもしれない抗体のこと、そして何より、色々な心配事にまた1から向き合わなければならないからです。

実際に主治医とは、血液検査の結果や、日々自分で撮り続けていた肌の写真を一緒に見ながら、小さな疑問や不安な想いを一つ一つ相談し、治療を進めていきました。

特に迷ったのは、「体には効いている。でも顔全体が赤くなっている。」という状態の時でした。

今使っている薬は一定の効果があるため、「ここまででも十分良い」と割り切るのか、

それとも「もっと自分に合う治療が見つかれば、今より快適な生活になる」と信じて新しい薬に挑戦するのか、その選択の時は本当に悩みました。

それ以外にも、思ったよりも効果が感じられなかった薬もあれば、副作用と思われる症状が出た薬もありました。結局は自分自身で試してみないと分からないのが現状です。

 

〇私はアトピーから解放されていない

最近私は、イブグリースからデュピクセントに「戻す」決断をしました。

新薬を使っていない頃と比べれば、血が出るまで搔きこわすことも、痒みで眠れなくなったりすることもありません。

しかし、日常生活の中で、「あ、痒いな」と感じる場面が少しづつ増え、その部分を無意識に触っている自分に気づきました。

実際に赤みや湿疹も出始め、ステロイドなどの塗り薬を使う頻度も増えてきていたのです。「前の方が良かった」と強く感じたのが決め手になりました。

また別の新薬では、アトピーの症状には効果があったものの、動悸のように心臓のリズムが乱れて胸が苦しく感じる症状が出たり、目の痒みが強くなり、目薬が手放せなくなったこともありました。

これらは副作用と思われる症状ですが、1つの症状が良くなる代わりに、別のことを我慢しなければならない現実に、「私はアトピーから解放されていないのだ」と思い知らされ、悲しくなりました。

 

〇アトピーでも快適に生きる

良い事ばかりではありませんでしたが、新薬治療を始めて後悔したことは一度もありません。なぜなら私自身のライフテーマである「アトピーでも快適に生きる」という目標は、確実に満たされつつあるからです。

私にとって「快適に生きる」とは、単にアトピーの症状が軽いことではありません。

まず、「アトピーであることを忘れて生活できること」

そして、「また悪化したらどうしようという不安がないこと」

更に、「もし症状が出ても、自分で気持ちを落ち着かせ、何をすれば良いのか判断できること」です。

私たち重症のアトピーの患者は、前日まで肌の状態が良くても、一晩寝ている間に掻き壊してしまい、翌朝に出掛けられなくなる経験を何度もしてきました。家族や友人との約束を守れず申し訳ない気持ちになるだけでなく、自分自身への怒りや情けなさを感じることもあります。

夜ぐっすり眠れること、好きな趣味を楽しめること、半袖を着られること。そうした普通の生活ができる喜びももちろんあります。

しかし、私にとって一番大きいのは、今まで毎日のように感じていた辛さや悲しみ、絶望や孤独を、もう感じ続けなくても良いことです。

あの頃の記憶が少しずつ薄れていき、昔の辛い記憶がフラッシュバックして眠れなくなることも、ここ数年は無くなりました。

それこそが、私のいう「アトピーでも快適に生きる」ということなのです。

SNSで知り合い、実際に会うようになったフォロワーさんが、「外出や旅行が出来ることが嬉しいのではない。その予定を立てられる事が嬉しい」と話してくれたことがあります。この言葉も、とても印象に残っています。

 

〇薬をいつまで使うのか

今、新薬ユーザーの多くの課題は、「いつまで新薬を使うか」という問題へ移りつつあります。

その背景には、「新薬で良くなった体を、今度はできるだけ薬に頼らず自分の力で維持したい」という前向きな思いと、「本当は新薬治療を続けたいけれど、費用の問題で継続できない」という現実の、二つの課題があります。

私はその二つを同時に叶えられる方法として、「注射を打つ間隔を少しずつ延ばす」という方法があると思っています。ただし、これは体の状態が十分に安定してから慎重に考えるべきことであり、計画性なく行うものではありません。

間隔が長ければ良いというものでもなく、自分の体調が1年というペースでどんな「波」があるのかを知っていることがとても大切だと感じています。

 

私たちアトピー患者には、症状を悪化させる要素が数多くあります。それらは季節の変わり目や花粉、黄砂、汗、寒暖差、年間を通した生活の変化などによって現れる、自分だけの「波」です。その波を知ることは、悪化を予防する事にもつながり、不安な気持ちを落ち着かせる材料にもなります。

「今回の悪化は花粉の影響だな」、「今回は寒暖差だ」、「汗が原因かもしれない」。そんな風に一年を通して自分の波を理解できるようになると、治療のパートナーとして伴走してくれる主治医とのコミュニケーションも、より深く、具体的なものになっていきます。その中で、いつまで使うのかは自ずと見えてくるのかも知れません。

薬に頼りすぎず、効果も維持しながら、経済的な負担も少なくする。そのバランスを多くの新薬ユーザーが今模索している最中です。

 

〇薬の変更に必要なこと―自分を観察する―

面倒くさいと感じるけど、結果的に自分のためになりました。

私の様に、「薬の種類そのものを変更しよう」と考える人や、「新薬をいつまで使うのか」考えている人に共通して言える大切なことは、「自分を観察すること」だと私は思っています。

私はデュピクセントを二度離れました。二回とも理由は、顔全体が赤くなってしまったことです。

「このまま続けるべきなのか」「別の薬の方が自分には合っているのではないか」と悩み、主治医とも相談した上で治療薬を変更しました。

もちろん、「ここまで効いているから満足しよう」と思う時もあります。

しかし調子が悪くなると、「せっかく高い治療費を払っているのに、このままでは嫌だ」と思う自分もいます。

その気持ちは決して贅沢なのではなく、「もっと普通に暮らしたい」という、ごく自然な願いでした。

そして、実際に他の薬を経験したことで分かったことは、顔以外の症状に関しては、私にとってはデュピクセントが最も安定していたということです。

一日の中で、「自分はアトピーなんだ」と意識する時間が最も少なく、生活全体を通してみると、一番安定して過ごせる薬だったことに、気づくことが出来ました。

見た目、かゆみ、手触り、検査の値、季節の波、そして心の安定は、自分を観察する事で分かります。

面倒くさいと感じるけど、結果的に自分のためになりました。

 

〇アトピーで諦めてきたことに挑戦できるようになった

私は、アトピーが最も重症だった頃、二十四時間かゆみが続く生活を送っていました。

掻き壊した全身の傷からは浸出液が出続け、その浸出液で衣類が肌に張り付き、お風呂に入るたびに衣類を「剥がして」から入浴していました。

朝起き時に体から落ちる皮膚(落屑)の量は、どんぶり一杯では収まらないほどでした。

部屋を掃除しても直ぐに床が粉だらけになり、着替えるだけでも皮膚が大量に落ちていきます。

外出の準備にも三時間ほどかかり、出掛けること自体が嫌になっていきました。

また、その頃の私は、ただ体が辛いだけではありませんでした。

症状が悪くなるたびに予定を諦め、やる前から「どうせ無理だ」と思うようになりました。

「諦める」という考え方が、自分の中に当たり前のように染み付いていったのです。

やりたいことが出来ない悔しさ、人と同じ様に生活できない寂しさ、未来を思い描くことすら難しい絶望感を抱えながら、毎日を過ごしていました。だからこそ今の私は、迷った時には「挑戦する方」を選んでいます。

今の私は、少しずつですが、昔は諦めていたことに挑戦できるようになりました。

SNSで知り合った方と実際に会って交流したり、動画配信を通して視聴者の方々とのコミュニケーションを取ったり、アトピーが最もひどかった学生時代の友人と再会したり、長期の旅行へ出かけたり、深夜バスでの長距離移動に挑戦したりしています。一つ一つ「できた」という経験を積み重ねることが、とても嬉しいのです。

私は今、アトピーで動けなくて、悔しくて、寂しくて、辛かった時間を少しづつ埋めなおしている最中です。

ですがこの時間は、自分自身のためだけではありません。一番苦しかった頃、何度も支えてくれた家族や友人、主治医、そして同じアトピーと闘う仲間たちへの恩返しにもなると思っています。

 

〇私らしく生きる方法を探し続けてきた6年間

アトピー治療の新薬の挑戦は失敗することもあります。

私は治療を始めてから、新薬であっても万能でないことを知りました。効果も副作用、思うような結果にならないこともあります。

しかし、失敗したとしても、自分の体について新しく分かることがあります。

その積み重ねは、アトピーを諦めない気持ちにつながり、結果として自分を大切にすることや、自信にも繋がっているように感じます。

この6年間は、単に薬を変え続けた時間ではありません。自分の体と向き合い、自分を知り、主治医と一緒に試行錯誤して「私らしく生きる方法」を探し続けてきた時間でした。

新薬治療は単に症状を改善するためだけのものではなく、自分らしく生きるための「選択肢」を増やしてくれるものだと思っています。生きている間に、このような新しい治療が受けられる時代が来た事を、心から幸せに思います。

ただ今でも、「もっと良くなりたい」と思う日はあります。逆に、「今回はここまで維持できたから十分だ」と思える日もあります。

その繰り返しの中で、自分の体と向き合い続けることが、これからの私のアトピー治療なのだと思います。

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