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アトピー性皮膚炎体験記:ステロイド軟膏の正しい使い方を知るまでの長い道のり

ステロイド軟膏の正しい使い方を知るまでの長い道のり

村上和彦  49歳

・幼児期~少年時代

母親から聞く所に拠ると極く小児期から湿疹は有ったとの事ですが、よく泥遊びをしたりもする幼児時代でした。症状を意識し始めたのは6~7歳の頃からで、ストーブでお尻に火傷をしたのを切欠にそこが悪化しました。当時はアトピーについて患者はおろか医師もあまり知識がなかったようで、幾つかの医院を転々とし中々よくならず、ステロイドと思わしき薬を処方されてやっと症状は治まりました。中学~高校になると顔や体の他の部位にも湿疹がでてきたのでまた幾つか皮膚科を変えつつ処方された軟膏を塗ってしのいでいました。痒みはありましたが、生活に支障が出るほどではなかったです。

・悪夢の症状悪化 ステロイド=恐ろしいという認識

しかし10代も終わりの頃、処方されていた軟膏のうち体の部位向けに処方されていた強いステロイドを良く効くからと顔に塗ってしまっていたのが悪夢への第一歩でした。塗っても効かなくなってきたのでおかしいと思い医師を変えた所、「君は大変な間違いをしている、それをやめてみなさい」と言われそうした所、それまでに無かったような痒みと壮絶な症状悪化に見舞われ、顔はグシャグシャに荒れ液だらけになり、体の部位も悪化しました。その医院に再度いくと「薬の使い方を誤ると、こうなるんです」と身をもって恐ろしさを叩き込まれたのでした。あまりに酷い状態だったので、医師からまたステロイドで抑えますと言われ、それによりサーっと症状は軽減しました。しかし極悪化の代償は左目の白内障という極めて大きいものでした。今でこそアトピー悪化で白内障になるケースは語られていると思いますが、当時その医師は因果関係を知らなかった様で首を傾げていました。丁度平成に成ったばかりの頃で自分と同じようにステロイドを急に止めて極悪化するケースがメディア等で「平成アトピー」と騒がれるようになってきたとも記憶しています。これにより「ステロイド=恐ろしい」という認識を強く持つようになり、もう使うのは嫌だと思うようになりました。症状が良くなってからはステロイドを一切やめて、1年半程度は極めて状態が良かったと記憶しています。

 

・気功道場へ行って最悪の状態に、そして・・

しかしまた段々と湿疹が出始めたので、ステロイドを使わない皮膚科に行き、そこで出された抗生物質の入った軟膏で暫くは凌いでいました。良いときもあれば悪いときもあると言う感じで、完治させたいと思い23歳の時、気功道場に行ってみました。そこで体を動かしていたら、数日も経たずに全身の皮が剥け出し浸出液が出てきてもの凄く悪化しました。ステロイドを止めていたにもかかわらずです。ゴミ箱や部屋中が皮膚だらけで爛れた皮膚からメリメリと音が聞こえてくる様な酷さで顔以外は以前の症状悪化の上を行く凄まじさだったかもしれません。今もなんでこんなに悪化したのか不思議に感じています。気功の先生からは「今、解毒によりこうなっている。頑張って続けていれば良くなる」と言われ信じるがままに続けましたが、3ヶ月経ってもよくならず当然ながら仕事も出来ない状況で気功は諦めました。当時あったアトピーの会に相談し、近くにある医院を紹介されステロイドを塗って症状を抑えました。なんとか職場をやめずに仕事を続けることが出来、それから暫く1994年から2014年までの20年間は、3箇所ほど医院を変えつつ、ステロイドを使う療法をしました。ただこの期間、ある程度は止まってはいるものの、痒みは常に感じ、荒れている部分もあると言う状態でした。

 

・再びアンチステロイド療法を実践し極悪な症状悪化

その20年間の最後のほうの夏、40代半ばの頃、強いステロイドを塗っても良くならず、オデキのようなものも多い状態になったため、再びステロイドに疑念を持つようになり、ネットで「ステロイドを抜けば良くなる」、「根本治療として減感作療法というがある」という情報も得て、それを実践している医院に通い始めました。医師からは「ステロイドじゃ治りませんよ」と言われその状態でステロイドをストップすると全身が凄まじい地獄といえる症状悪化に見舞われました(極悪化は3度目でしょうか・・・)。痒みと痛み、多量の浸出液、痺れと寒気、大量の皮膚の剥離、60kg近くあった体重は47kgほどになり、会社に行くのもかなり無理がある状況でしたが、医師からしばらくすれば副腎皮質の自己精製能力が上がってくるので良くなる、ステロイドはまた依存に陥るので使わないほうがいいと言われ、それを信じ2か月ほど耐えてなんとか乗り切りました。この時もステロイドはなんて恐ろしいんだと思いましたが、今考えるとこのように悪化しているのに急にステロイドを断ち切ることこそ誠に危険なことだったと思います。

 

・睡眠がとれず掻き続けて夜を明かす日々

以降の4年弱は、ステロイドは殆ど使わず、顔を小児プロトピック、体を抗生物質の入り軟膏、並び成人用プロトピックを状態に応じ塗布していました(医師はプロトピックには寛容でした)。朝、夜に風呂で消毒などスキンケアもしました。顔面は小児プロトピックで良い状態が保たれていますが、体は状態が結構良いときも確かにあったものの、大抵は社会生活が出来る程度に「悪い」という感じで、具体的に言うと全身に痒みがあり茶ばみが多いのと、手の甲とか股など部分的に浸出液が出てジュクジュクの極めて症状が悪く猛烈に痒い箇所が1~2カ所どこかしらにあり、様々な部位から細かい皮膚が落ち部屋中にばらまいてしまう状況でした。特に状態が悪い部位は抗生物質入り軟膏と亜鉛華軟膏を併用しますが、亜鉛華軟膏は非常に扱いが面倒なのと効き目がよく分からなく、むしろ蒸れて痒くて悪化してしまう感じでした。また飲み薬で抗ヒスタミン剤を毎日飲みますが、このような状態では痒みは全く治まりませんでした。痒みで寝付きがわるく、6~7時間寝床にいても睡眠は3~4時間程度しか取れない日が多く、時に寝床のまま睡眠はとれず掻き続けながら一夜を明かしてしまう事も。悪化している部分を見せても「この程度は大したことない」、「痒くても我慢。掻かなければ治る」と言われ、「ダニ、黴が無くなる様、部屋の湿度は40%に」、「アレルゲンを取り込まないよう徹底しなさい」も良く口にされる言葉でした。そして1度、夏場にどうにも症状が我慢できないのでお願いして中レベルのステロイドを要所だけ塗る前提で少し処方してもらいましたが、数日軽減した後は、更に悪化の一途でかなり厳しい状態になりました。医師は「ほらリバウンドが来た、だからステロイドはまずいんです」と言い、私もそう思い込みました。(悪化しているのにレベルが十分でないステロイドを少し塗っただけで、焼け石に水のような処置かと今は思います)結局、この時もかなり厳しい状態に陥りましたが、ステロイド無しでなんとか乗り切りました。しかし最後の半年強の間は、再びじわじわと悪化の一途を辿り、全身が荒れてきて、ちょっとした擦れとかでも皮膚が割ける感じでこのままだとまたまた極悪化するかもという状況になりました。

 

・減感作療法

この期間に平行して行った減感作治療は7~10日に一度、注射をする形で行いました。効果が出るのに3年から10年かかると言われており、私は効果がまだ見出せない中で途中下車する事となりました。因みに最初のige測定時15000程度で、その後20000辺りを前後しながら3年半後の最終測定時は30000程度でした・・・。想い起せばこれでアトピーが治ったと言う人の話は殆ど聞いてなかったなと思ったのと、「20年やったが効かなかった」、「花粉症ならともかく、アレルゲン因子の多いアトピーに減感作は効かないのでは?」という記事も読みました。改善した(igeが下がった)という方が居ればお話を伺いたいです。

 

・標準療法を知る

そんな中、本当にステロイド療法はダメなのか?と色々調べた所、ここアレルギー友の会からの情報と逓信病院や九州大学の先生が提唱する標準治療の存在を知り、あれ?考え方が正反対じゃないかと思いつつ2018年の夏、思い切ってステロイド療法の医院に切り替えることにしました。日々のスキンケア(朝と夜に全身を石鹸で確り洗う)と正しく要綱に沿って適正な強さのステロイドやプロトピックを使い、症状が完全に抑えられれば徐々に濃度を下げつつ保湿剤に切り替え、その使用を減らしてゆき、偶に使う程度で済むようになるとの事です。実際にここアレルギー友の会の患者会に出席して、かつては重症だったが標準療法で極めて良好な状態を維持できている人とも会う事ができました。そして私自身も治療を切り替えてまもなく、これまでになく症状は落ち着き、痒みも殆どなくなり睡眠もちゃんと取れるようになりました。高かった費用も月5千円以下に減りました。先に書いたように以前もステロイドを使っていた時期がありましたが、その時よりも明らかに改善しています。当時との違いは、朝夕シャワーか風呂に入り石鹸で全身を確り洗った後にステロイドを確り塗るということです。思えば当時は石鹸は良くないと思い、使っていませんでしたし、ステロイドも適当に塗っていたと思います。スキンケアをちゃんとしないと感染症による悪化でステロイドが効かないケースがあるとも聞きました。今、この療法に切り替えて4ヶ月経ち、経過は順調で、塗り続けても症状が治まらないようなことも無く、またステロイド濃度も1ヶ月ごとに徐々に減らしています。医師から言われていることですが、自分の判断で薬を使うのでなく要領を守って療法を続ける、少しでも変だと思ったら遠慮せずに相談して欲しいとのことです。この調子で今後も標準治療を続けようと思います。仮に悪化したとしても急にステロイドを断ち切るようなことはもうするつもりはありません。また暫くしてその経過を皆さんにご報告できたらとも思っています。

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