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27.5.17開催 専門医に学ぶー自分に合った治療法ー講演会とQ&A レポート

★専門医に学ぶ-自分に合った治療法-

アトピー性皮膚炎・ぜんそく講演会レポート

 

 去る5月17日(日)にフォーラムミカサ・エコにおいて開催された講演会は、多くの方にご来場いただき、盛況のうちに終えることができました。

 講演は、アトピー性皮膚炎とぜんそくをテーマに、それぞれ第一線で活躍されている専門医の先生方にお話をいただき、その後「あなたに伝えたいメッセージ」と題してそれぞれの病気について患者であるお二人の方に体験談を語っていただきました。

 アトピー性皮膚炎の講演は、日本医科大学皮膚科教授の佐伯秀久先生のお話です。「アトピー性皮膚炎に関する最近の話題」をテーマに、最近取組が進められている研究として、かゆみの要因に関する抗体治療の研究、皮膚のバリア機能の異常などに遺伝的要素が関わっているかどうかの研究などについてご紹介いただき、同時に日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に沿った標準治療の解説CIMG4998.JPG

や、現在このガイドラインが改定作業中であることをお話しいただきました。さらに標準治療でのステロイドとタクロリムスの使い分けやスキンケアの重要性、近年注目されている寛解維持療法(プロアクティブ療法)の有用性について、写真や実検結果のデータを交えながらご説明いただきました。 ときどき一般報道でもアトピー性皮膚炎に関する学術研究の発表がなされることがありますが、多方面の専門家が日夜この疾病の解明と有用な治療法について研究を進めており、その成果がもたらされることを多くの患者が待ち望んでいる、ということに思い至りました。

 

 ぜんそくの講演は、渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック/呼吸免疫研究所 院長/所長の土肥眞先生のお話です。「呼吸器疾患のトータルライフケア」というテーマで、「健康とは、私たちの身体を作るおよそ60兆個の細胞がその機能を適正に発揮すること」との前提から、呼吸(R)、循環(C)、代謝(M)の三つの要素がひとつのサイクルを作って回転する「R-C-Mサイクル」を回していくことが健康を保つ大きなポイントであるという、大局的な視点からの提唱でした。CIMG5026.JPG

特に呼吸に関しては、生物の進化過程における肺機能の成り立ちや鼻呼吸、腹式深呼吸の重要性、口腔と気道のケアなどの具体的な話があり、さらに姿勢や運動などに話題が広がり、まさに人間の体をしくみを探求したうえでの総合的・全人的なケア=トータルライフケアがこれからの長寿社会を生きるのに大きな意味を持つということがわかりました。ぜんそく患者ならずとも、自分の健康維持を考えるのに大いに参考になるお話だったと思います。

 

続いて、当会理事長の堀内繁氏より、「症状なしでも長期管理薬を使い続けて。そして今」と題し、若い頃のぜんそく発症から長期にわたる治療遍歴を語っていただきました。

発症当時は対症療法と減感作療法しかなく有効な治療法が確立していなかったこと、インタールやステロイド吸入といった治療法の進化により軽快を見たこと、高齢になってからの狭心症の罹患がきっかけで循環器科の医師CIMG5051.JPGにかかり、新たな治療法を10年間続けたこと、

ここ一年は一切の治療がなくても症状が出なくなっていることなどのお話でした。症状がなくなっても吸入ステロイドの治療は継続していくことが大切で、そうすれば健康な人と変わりなく生活できる、という点を力説し、同じ病気で苦しんでいる多くの人を少しでも救いたいという思いが伝わってきました。

 

 最後は、「一度の人生、楽しく生きたい」と題し、当会でもボランティアとして活動経験のある蛭田翼さんのアトピー性皮膚炎の体験談でした。徐々に症状が悪化していった中・高校時代、カポジ水痘様発疹症に罹患し地獄のような日々を送った高三から大学生の頃、脱ステロイド、カウンセリングを経て標準治療にたどり着き、ようやく回復を見て現在は健常の人と同じように趣味や仕事に打ち込めるようになったことをお話いただきました。CIMG0168.JPG医学的根拠の薄弱な民間療法の情報に振り回されず、地道に標準治療に取り組み、症状をコントロールすれば十分普通の生活を送ることができる、ということが参加者の皆さんにも伝わったのではないか、と思います。

 

 

 

アレルギーの疾病に苦しみ、生活が制限されてしまうと、精神的に落ち込んで「なぜ私だけが…」と思ってしまうことがあるかもしれません。しかし、苦しんでいるのは自分だけではなく、多くの人が同じような思いをしていること、それに負けずに適正な治療法により症状をコントロールしながらかつての健康的な生活を取り戻している人も確実にいることを知ってほしいと思います。そのための情報提供とアドバイスを当会は常に発信し続けたいと思っています。

今回の講演会が多くの患者さんの励みになれば幸いです。

【アトピー性皮膚炎部門Q&A】

講演会第二部のアトピー性皮膚炎部門は第一部と同じ部屋で行われました。事前に集まった質問の多さから、開始時間を少し繰り上げ、第二部の時間を長めにして行われました。複数あった質問が頭のかゆみについてでした。頭皮のかゆみや傷は薬が塗りにくい事もありますが、かゆみを放置しているとやがて、抜け毛など髪の方にも影響が出てくるので、これから更に暑くなるので、特に切実な問題です。CIMG0191.JPG

また、質問の中には医師から十分な説明がなされなくて困っている、と言った質問もあり未だにそういうケースもあるのだなと思いつつも、医師と患者の相性や認識の違いがある事も間々あるので、治療方針や必要な所ではちゃんと自分で記録や確認する、疑問があれば遠慮なく聞いてみる、などが改めて必要になるのではと思います。

この他にも、友の会の電話相談や講演会での質問にもよくあるのが、家族にステロイド剤に対する悪いイメージから、子供にステロイド剤を使わせたくないと言うが、親をどう説得すれば良いのか、と言った質問もあり、かつてのステロイド不信の根深さを実感します。厄介なのは脱ステロイドに固執し、本人が聞く耳を持っていないとなかなか説得させるのが難しくなります。

温泉や入浴剤に関する質問もありましたが、温浴療法も手軽で薬に頼らないで治療したい気持ちもよく分かりますが、ことアトピー性皮膚炎に関しては費用対効果で言うとあまり期待出来なさそうでした。

最近、認知度が上がってきたTARCに関する質問や、海外でのアレルギー検査に関する質問もありました。

またステロイド剤と保湿剤を塗る順番に関して、医師の説明が正反対でどっちが正しいのかという質問もありました。患者からの質問に、ちゃんと納得できる説明をしてもらえる医師かどうかも治療の上で大事なポイントだと思います。

今回は2桁以上の質問が集まり、その内容の殆どは今までの様なステロイド剤に対する誤解が解消されてきた印象でした。患者自身が正しい情報を蓄積してきた結果か、先生方も高度な質問に驚かれ、的確なアドバイスを熱く語られる程でした。

質問と具体的な回答は今後のあおぞらにも掲載されますので、似た様なケースや同じ悩みがありましたら、ぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。

また、今回は講演会に参加出来なかったという方も、次回の講演会での質問をお待ちしております。

【ぜんそく部門Q&A】

第二部のぜんそく部門として、土肥先生・坂本先生を囲んでQ&Aを行いました。

 参加者数は15名ほど、男女比は半々、(見た目の)年齢は20代から70代まで、老若男女さまざまな方たちが集まっています。

Q&A開始直前のことです。最前列に着席する方が一人もいません。そこでスタッフが最前列のイスを片付けようとすると…二列目に座っていた方々の不安そうな表情ったら!結局最前列のイスはそのまま、誰も座らないままQ&Aを始めることになりました。参加者にとっては、初めて出会う医師との間に長机とイスを挟んだくらいの距離がちょうどよかったのかもしれません。

Q&Aの中で印象深かったのは「テレビでカビの話を見た」という話から始まったやり取りです。参加者は、テレビで見聞きした情報から生まれてきた疑問と、主治医とのコミュニケーションで解消されなかった不安な事・不明点を率直に質問し続けます。それに対して土肥先生は「テレビを見ると心配になるのはわかります」と患者側の不安な気持ちを受け止めながら“根拠”“(自覚症状のみで判断せず)検査をして状態を評価すること”“客観的な評価が大事”というお話をされていました。

CIMG0208.JPG

今や医療や健康に関する情報を得ることは難しくはありません。テレビ・雑誌・新聞・インターネットなど、様々な経路から情報を得ることができます。私たち患者にとって難しいのは、それらを本当の意味で理解し、評価し、活用していくことではないでしょうか。土肥先生は、そのための基本的な考え方を示して下さったのだと思っています。

(初めて出会う医師との間に距離を取るように)テレビやインターネットで見聞きした話にも距離を取ってみること。そこから始めてみませんか?

 

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