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アトピー体験記:アトピーになったから見つかった夢

 アトピーになったから見つかった夢 〜お母さんと歩んできた6年間〜

  中学生のころからのアトピー性皮膚炎で、高校生の頃に悪化し、涙に暮れる日々のNWさん。周りからの励ましにもポジティプな気持ちになれず悩んでいました。

転機になったのは国際ボランティアとして行ったバングラディッシュ。恵まれた環境にある自分を発見し、感謝する心が生まれたときです。そして今は就職し、やりたいこと、行ってみたい場所、勉強したいことがたくさんあります。 と希望に満ちた体験記を書いてくれました。

山梨県 NWさん (20歳)

 

   アトピー性皮膚炎を患って、今年で7年目になります。体調不良が続き、心のバランスが取れずに過ごした学生時代を乗り越えて、元気な社会人になりました。とても辛かった学生時代が、今では私自身をつくる大事な経験となっています。

 【中学校時代 —アトピーの発症—】

 私は中学校3年間、ソフトテニス部に所属していました。テニスが大好きで、テニスをしている時間がいちばん楽しく、もっと強くなりたい一心で、毎日、一生懸命、練習に励んでいました。

 アトピーの症状は、中学2年生の頃に少しずつ出始めていたのですが、部活動を引退し、テニスから離れると、アトピーの症状が急激に悪化し始めました。もともと肌が弱いのに、強い日差しや汗によって、肌に過度な負担を掛けてしまったことが原因を招いたのかもしれません。ちょうどその頃、受験に対するプレッシャーや、学校生活の人間関係で、精神的にストレスがあったことも原因のひとつだったと思います。

 私の場合、夜寝ている間に腕、背中、お腹、脚などを掻いてしまっていたので、朝起きるとベッドのシーツに血がたくさん付いてしまっていました。全身の痒みと痛みで、朝から泣いていました。学校へ行くとき、セーラー服の下は、薬を塗って包帯をぐるぐる巻いた、痛々しい状態でした。掻いてしまった痛みから、全身がピリピリ痺れている感覚になり、シャーペンを握れない時もありました。私の住んでいるところは寒冷地で、冬はマイナス10度前後の気温の日もあるので、肌の乾燥にも悩まされていました。

 

【高校時代 —泣いてばかりいた毎日—】

 高校でもテニスを続けたくて、ソフトテニス部に実績のある高校に入学しました。しかし、アトピーはひどく、汗をかく激しいスポーツができる状態ではありませんでした。念願だったテニス部に入部することを諦めなければならず、とても悔しい思いをしました。しばらくは、どの部活動にも入る気持ちになれませんでした。中学校時代に結果を残してきたこともあって、放課後テニスコートを横目に帰る自分がすごく惨めで、悲しい気持ちになりました。

 部活動どころか、体育の授業も見学することが多くなりました。頑張りたい気持ちがあるのに、みんなと同じことができなくて、「どうして私には○○ができないの?」と思うことを何度も味わいました。負けず嫌いな私にとって、そういうことがいちばん悔しく、不甲斐なかったです。

 3年生になると、受験のストレスやプレッシャーからアトピーの症状も悪化しました。学校に行っては休んでの繰り返しで、出席日数も足りなく、補講を受けて単位を取得したほどです。受験で大切な時期なのに何日も休んでしまい、勉強で遅れをとると、気持ちも焦り、ネガティブになっていました。こうして精神的に病んでいると、アトピーの症状はさらに悪化してしまいます。悪循環でした。何事も頑張りたいのに、アトピーのせいでそれができない毎日。苦しくて、何度も泣きました。

 私は幸い、顔にアトピーの症状が現れなかったので、友達にはアトピーのことをあまり話していませんでした。恥ずかしいという気持ちもあったし、かえって心配させてしまうだけだと思っていたからです。だから、辛い時は、家でたくさん泣きました。私より、重く、大変な病気を患っている人が大勢いることはわかってはいても、当時の私は、自分の壁を乗り越えることがとても困難で、心が崩れ落ちてしまいそうでした。

 私はおしゃれをするのが好きで、洋服やお化粧品を買うことが楽しみのひとつでした。しかし、薬のせいでお気に入りの洋服は油っぽくなったり、市販のコスメではすぐに肌が荒れてしまったり、おしゃれがしたい年頃の女の子にとって、ため息が出てしまうようなこともたくさんありました。また、東京の病院に定期的に通うことや、食生活に気を使うこと、いろんなことが重なって、嫌になってしまうこともありました。お母さんに八つ当たりしてしまうこともあり、その度に情けなく、落ち込みました。

 

【小さな変化】 

高校時代の担任の先生は、私のアトピーのことを親身になって考えてくれました。「辛い経験は、自ら望んでできることじゃないよ。夏子になりたい人が居たって、今までの経験は絶対に真似できない。それを乗り越えた先のことは、夏子にしか見ることのできない世界だよ。」とおっしゃってくれました。その頃の私は本当にネガティブで、そのような発想もなかったので、心が動きました。

 どうにかしてポジティブになりたくて、私は自分の好きなことを見つけようと思いました。前向きな気持ちになれる本を読んで、心が温まる映画を観て、楽しくなる音楽をたくさん聴いて、趣味の幅を広げました。好きなことに夢中になっていると、アトピーの辛さから開放されました。

 私は小さい頃から野菜が苦手で、食生活が偏りがちでした。アトピーになってから、野菜嫌いを克服しようと少しずつ挑戦するように心掛けて、苦手な野菜も少なくなりました。食生活を改善すると、アトピーの調子も良くなってきた実感がしました。

 高校に入学して数ヶ月が経てば、きっと体調も良くなってテニス部に入部できるだろうと考えていました。しかし、アトピーは徐々に回復してきていたものの、3年間テニスをすることはできませんでした。いつまでも落ち込んでいてはいけないと思い、担任の先生の助言から、2年生の夏に英会話部に入りました。英語や海外の文化に興味があったことと、学校を休みがちな自分でも続けることができると思ったからです。人と自分を比べるのではなく、自分にできることを自分のペースでやることが大切だと気付きました。

 

【専門学校 —見つけた夢—】

 高校を卒業後、専門学校で国際ボランティアを専攻して学びました。海外研修の行き先は、バングラディッシュでした。水道設備が十分に行き届いていないバングラディッシュでは、衛生状態が良くありません。アトピーがやっと良くなり始めてきた状態だったので、行きたかった海外研修も諦めなくてはなりませんでした。アトピーのせいで諦めなくてはならないことが今までいくつもありましたが、もう普通の日常生活が送れるようになっていた頃だったので、またか、とがっかりしました。でも、現実を受け入れるしかありませんでした。

 国際協力をしたいと思ったのは、実はアトピーになったことがきっかけです。貧しい国に暮らす子どもたちは、例えば、学校の先生になりたい、スポーツ選手になりたい、などといった夢があっても、その夢を叶えるための教育環境や衛生環境が整っていないため、夢を諦めなければならないことが多くあります。学校に通うことができない子どもたち、病気でも病院に行けない子どもたち、兵士として戦場で戦っている子どもたちも大勢います。私は学生時代、アトピーで大変な毎日を送っていましたが、学校、病院、家庭など、努力することができる環境が在ったからこそ、頑張ることができました。だから、発展途上国の子どもたちの夢を叶えるお手伝いをしてあげたいと考えるようになりました。もしもアトピーにならなかったら、何気ない日常生活への、この感謝の気持ちにはきっと気付けなかったと思います。アトピーになったから、私は夢が見つかりました。

 

【現在 —わくわくする気持ち—】

 今年の4月から社会人になりました。専門学校生のときに卒業論文で調べた、地球環境にも体にもやさしいオーガニックやナチュラル製品、アロマテラピーに興味を持ち、ハーブやアロマグッズを扱うお店で働いています。

 今でも毎日、薬を飲んで、塗り薬も塗っていますが、跡が少し残っている程度まで回復しました。傷の跡は、お母さんと一緒にアトピーと戦った証だと思っています。お母さんが居なかったら、私はアトピーを治すことをとっくに諦めていたと思うし、今こうして夢を抱いて穏やかな毎日を過ごせていなかったと思います。アトピーで、辛く落ち込んでいる時、イライラしている時、悲しくて泣いている時、いつも私を励まし、背中をそっと押してくれるのはお母さんでした。高校3年間、私の体を気遣って、冷凍食品を一切使わない手作りのお弁当を作ってくれました。今でも私の手の届かない箇所に薬を塗ってくれて、私の重い腰を上げて病院に連れて行ってくれます。お母さんは、これまで様々な病院や治療法を探して、私に勧めてくれました。そのおかげで、今お世話になっている病院の先生たちやお薬にも巡り合うことができました。心の底から感謝しています。お母さんの愛情が、私のアトピーを早く治してくれたのだと思います。

 今は、やりたいこと、行ってみたい場所、勉強したいことがたくさんあります。アロマテラピーで、心が弱っている人や体の調子が悪い人にアドバイスしてあげられる人になりたくて、勉強しています。アロマテラピーを習得したら、家族や友達にもリラックスできる施術をしてあげたいです。アロマテラピーでボランティアができるようになることが、今の私の夢です。何もできなくて辛かった学生時代の日々を取り戻すように、一日一日、感謝しながら丁寧に過ごしたいです。

 この夏は、仕事が休みの日に友達とテニスをしたいと思っています。

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