アトピー性皮膚炎治療研究会第30回シンポジウムにて患者の立場から講演
丸山恵理

 

２月１日に福岡市で開催されたアトピー性皮膚炎治療研究会第30回シンポジウムにて、患者の立場から講演をしてきました。今回の会頭で当会顧問でもある、九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野教授の中原剛士先生からお招きいただいたものです。このシンポジウムはアトピー性皮膚炎の治療法を医学的に正しく評価し、普及・発展させることを目的に毎年１回開催されています。
スポンサードシンポジウム1「アトピー性皮膚炎を取り囲む社会について」では、３つの講演があり、３００名くらいの専門医の先生方が参加されていました。

 

講演1　「アトピー性皮膚炎と社会的ひきこもり」
九州大学大学院医学研究院　精神病態医学　准教授　加藤隆弘先生

講演2　「大きく変質しているSNS、アトピー性皮膚炎の情報共有に活用できるか?」
東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科　講師　堀向健太先生

講演3　「アトピー性皮膚炎治療の新時代に患者の立場から考えること」
認定NPO法人日本アレルギー友の会　副理事長　丸山恵理

 

【私の主な講演内容】

自己紹介

友の会の活動内容の紹介のあと、自己紹介として私自身の検査値の推移を示した。

このように生後３ヶ月から重症のアトピー性皮膚炎であった私のことを先生方に紹介するためには、症状をお話するより検査値を見ていただいた方がわかりやすいと思った。2021年よりデュピクセントを開始し、検査値は下がったが体感としては80%くらいの改善であった。

 

現在のアトピー性皮膚炎患者を取り巻く環境と現実

治療の選択肢が増えた現在でも良くならないと悩む患者がいる現状の問題点として、「ステロイド忌避」と「新薬の情報が広まっていない」という現状があることをあげ、ステロイド忌避になる理由として、ステロイド外用薬を処方した際に使用方法を説明されていないことが多い。患者はステロイド外用薬は怖いから薄く塗る、数日でやめてしまうという使い方をしているために、効果が実感できずにステロイドを使って治療をしても良くならなかった、かえって治りにくくなった、リバウンドでひどい目に合ったという体験をすることで忌避になってしまう。そうならないようにするためにステロイド外用薬を処方する際には塗る場所・塗る回数・塗る量・塗る期間を説明していただき、ステロイド外用薬は効くという実感を患者が持てるようにしていただきたい。

 

新薬使用後のQOL向上

2021年３月より注射薬を開始し、下記のように私は毎日の生活の質が改善した。
○痒みがほぼなくなった
○皮膚のバリア改善
○外用薬の使用量も減り、スキンケアも楽になった
○通院の頻度が減って仕事を休む負担が軽減された
○精神的苦痛の改善

 

新薬の情報が広まらない理由・新薬を使う患者の声

現状の問題点のもうひとつてしてあげた新薬の情報が広まらない理由の患者サイドからの理由についてお話しました。また「新薬ユーザーの会」の方の協力を得て新薬を使い始めた患者からの声として下記のようなことがあることをお話しました。
○新薬を処方する医師の判断基準にバラツキがある。
○初診ですぐに新薬を処方してもらえる人もいるが、外用薬でまず治療してからという医師もいて、一日も早く良くなりたい患者としては不公平感がある。

 

新薬を納得し、安心して使うために先生方へのお願い

新薬の導入にためらう患者には何が不安なのか、患者によって不安の内容が違うので、その理由を聞いて一緒に解決してほしい。
新薬の使用実績を皮膚科医同士で共有し、蓄積していってほしい。その情報をもとに新薬の開始時や薬剤の変更時に患者に納得のいく説明をしてほしい。

 

新薬の未来に期待すること

新薬を中止した後のコントロール法について確立してほしい。
遺伝子解析等で自分の体質に合った薬を使って確実に早く良くなる治療としてほしい。

 

この日の最後には「アトピー性皮膚炎について本音を語る会」というパネルディスカッションがあり、７名の専門医の先生方の治療の考え方などがわかり、有意義な時間となりました。