T・Kさんは当会のホームページの東日本大震災の体験記募集に応募してくださいました。未曾有の震災に遭い、生き方まで見直すことになったという言葉に感銘を受けました。そして当会のことを知り、標準治療がしっかりできるようになっていたために被災後の不自由な生活の中でも症状の増悪が防げたというのはたいへん嬉しいことです。
アトピー性皮膚炎を持ちながら生きていると、さまざまな困難が待ち受けていますが、それを乗り越えていくためにどうしたら良いかを考えさせられる体験記です。
(宮城県仙台市 T・Kさん / 女性 )
<アトピー重症期>
私は生後間もなくアトピー性皮膚炎を発症しました。症状は軽く、部分的に出る程度でした。しかし、20歳の頃、急激に悪化し、全身に広がり、ベリーストロングのステロイド剤を使用することに。「ステロイドは悪いもの」と思い込んでおり、医師に指示された量や回数を守らずに使用していました。約1年間は、病院に行く以外はほとんど外出せず、家に引きこもる生活。仕事を始めてからも、休日は家にこもることが多く、人間関係を良好に保つこともできませんでした。一年中、長袖の服を着用し、赤みを隠すために化粧をするたび、「こんな肌で一生を生きていくのは嫌だな、何のために女として生まれてきたんだろう」と思いました。20代は、症状が良くなることはなく、鬱々とした日々が過ぎていきました。
〈アトピー回復期〉
30歳になり、朝日新聞で日本アレルギー友の会の記事を読み、ステロイド剤に対する自分の考え方が間違っていることがわかりました。また、自分がアトピーと向き合ってこなかったことも、痛感させられました。それを機に、医師に指示された通りに薬の使用を始めると、症状は落ち着き始めました。今年の夏は、10年ぶりに半袖の服を着ることもできました。
〈震災を経験して〉
今年の3月に東日本大震災を経験しました。幸い、私が住んでいる地域は、大きな被害を受けることはありませんでした。しかし、停電や断水が続く中、「生活って、こんなに簡単に変わってしまうものなんだ」と、感じました。運良く、私は薬や化粧品類の残量に余裕があったため、症状が悪化することはありませんでした。今でも余震が続いているため、在庫を切らすことなく、余裕を持って購入することを心がけています。
震災で亡くなられた多くの方々、避難所で不自由な生活を送られている方々。そのような方々の記事や話を見聞きし、命の尊さを実感しました。今まで、「何もかもうまくいかないのは、アトピーのせいだ」と思って生きてきました。しかし、「命があるだけでもありがたいんだ、こんな私でも生かされているんだ」と考えられるようになりました。
「アトピーは死ぬような病気ではない」と言う人もいます。でも、死ぬほど辛い病気だと思います。アトピーとは、一生の付き合い。これからも、辛いことはたくさんあると思います。でも、生きていることには意味がある。逃げずに、前向きに生きていきたいと思います。