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5.29 講演会レポート

去る5月29日に、本年度一回目となる当会主催の講演会が開催されました。当日の東京は朝から青空が広がり、受け付けの開始と共に多くの方が来場されました。

 当会理事長堀内繁の挨拶と当会の紹介に続いて、お二人の専門医による講演が行われました。

第一部 講演1「アトピー性皮膚炎のゴール -外用剤の使い方とセルフコントロール」

 関西医科大学皮膚科学講座准教授 神戸(かんべ)直智先生

 当会常任顧問の江藤隆史先生(東京逓信妙院)による講師紹介を受けて始まった神戸先生のお話では、ユーモアあふれるスライドを使用して、皮膚の構造や機能が分かりやすく説明されました。

 その後、ステロイド外用剤は現在ある炎症を抑えるもので予防効果はないこと、ランクの強弱よりもまずは処方された薬をしっかりと塗ることが重要であるなど、ステロイド外用剤の特徴や上手な使用法をご教示頂きました。また、かつて子ども病院に勤務されていたときのご経験から、アトピーのお子さんを持つ方に対して、「皮膚炎が悪化するからという理由でプールや運動を禁止するのではなく、友達と同じことができるようになることを目標にして治療を行っていきましょう」というメッセージをいただきました。

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講演2「喘息 気管支の炎症といわれても…」

 帝京大学医学部附属溝口病院第四内科教授 幸山(こうやま)正先生

 当会常任顧問の坂本芳雄先生(ふれあい横浜ホスピタル)による講師紹介に続いて行われた幸山先生の講演でも先生ご自身が描かれたというイラストの入ったスライドを使用して、ぜんそくの診断方法や、咳や喘鳴などの症状が起きる仕組みが分かりやすく説明されました。続いて、ぜんそくの定義は気道の慢性炎症であり、気道狭窄、咳、喘鳴などの症状はぜんそくのごく一部に過ぎないこと、その主因となっている好酸球による慢性的な気道炎症をステロイドでしっかりと治療することが重要であることが強調されました。

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講演3「主治医が知りたい患者の情報」

 今回の企画として、診察時に患者がどのような情報を提供すると診断や治療に有益であるかを当会常任顧問の江藤先生と坂本先生にお話しいただきました。

 ぜんそくでは、重症度の指標(客観的な指標ではピークフローや、主観的な指標としては、坂道を登れるか、話をすることができるかなど)、薬をきちんと使っているかどうか、効いている、あるいは効いていないと思う薬があるか、悪化因子(タバコやペットの有無、ぜんそく以外の薬を使用しているかなど)が診断の役に立つとのことです。正直に恥ずかしがらずに伝えることが重要とのお話でした。

 アトピー性皮膚炎では塗った薬の量を把握することが重要で、そのために江藤先生は空になった軟膏のチューブを持参してもらうこともあるそうです。また、どの程度の症状まで改善すれば満足感が得られるかは人によって異なるため、どの位の状態で幸せに感じるかや、近い(または遠い)将来にやりたいことを患者に尋ねることもあるとのことでした。その他、ステロイド外用剤の誤解についても取り上げられました。外用剤の使用で色素沈着や皮膚が硬くなることはありませんが、子どもではまれにムーンフェイスが起こったり、骨がもろくなることがあるとのことです。

 これらの講演の詳細な内容は、今後の「あおぞら」に順次掲載していく予定です。

 会場には協賛企業各社のブースを設置し、アレルギー関連の商品を展示し、一部サンプル品の配布も行いました。また当会が刊行した書籍の紹介コーナーも設け、手に取ってご覧頂きました。講演と共に治療に役立てて頂ければ嬉しく思います。

 

 

アトピー性皮膚炎部門Q&Aレポート

 第二部のアトピー性皮膚炎Q&Aは、第一部でご講演いただいた神戸直智先生と江藤隆史先生を囲んで行われました。

ニキビとの関連、皮膚の色素が抜けてできる白い斑点、頭皮にできる症状、汗をかくことや日光に当たることの影響、金属アレルギー、白内障などの合併症に関することなど、多岐に渡る質疑応答がなされました。質問された方が今まさに抱えている切実な問題ばかりで、その大変さがひしひしと伝わってきました。

質問はあらかじめ質問票に書いて提出していただき、江藤先生が読み上げるという形で行ったのですが、今回は書いた人が手を挙げて内容を具体的に話してくれる場面が多く、先生方との直接のやりとりを通じてよりリアルなQ&Aになったと思います。

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改めて感じたことは、皮膚というのはアトピー性皮膚炎だけでなく、実にさまざまな症状が現れ、我々を悩ませることの多い特別な器官なのだな、ということです。外から見えるだけについ他の人の目が気になってしまい、特に思春期など多感な年齢のときに良くない状態になると精神的にも落ち込んでしまう。本人はいたく傷つき、家族や周囲の人が心配して右往左往する… そんなパターンが多いように思います。今回のQ&Aでも、本人ではなく親や祖母からの質問が多く寄せられ、何とか本人の力になってあげたい、という思いが感じられました。

二人の先生方は、専門家として現在考えられうる限りの知見をもって回答してくださり、それを聞いている周りの人も大いに参考になったことと思います。

治らないことを嘆くのではなく、「なぜ治らないのか」と原因を追究し病気を知ろうとすること、「少しでも良くなるにはどんなことをしたらよいか」を能動的に考え、行動に移すことが大切だと思います。神戸先生が仰っていたように、「治療のゴールは、自分に合った改善の方法を経験の中で会得すること」であり、友の会が提唱しているように「医師や薬の力を使って自分で治す」という意識が何より必要であると言えましょう。その気持ちがあれば、明日から風景が違って見えるのではないでしょうか。 

ぜんそくQ&Aレポート

第二部のぜんそく部門として、講師の幸山正先生、当会常任顧問の坂本芳雄先生を囲んでのQ&Aを行いました。今回の参加者は35名ほどで、ほぼ満席状態です。

初めに、海外旅行についての質問が出ました。

参加者「飛行機を数回乗り換えるが発作が心配」「マスクをつけた方が良い?」

幸山先生「長期管理薬を使っていることを前提とします。ピークフローを毎日チェックし、数値が下がらないように日頃からコントロールしておくことが大事です。飛行機に限らず、気圧の変化で悪化する方がいます。搭乗の30分ぐらい前に発作治療薬を使うとよいでしょう。飛行機でカゼをうつされることも多いので、マスクもした方がいいでしょう」

海外旅行は心配事が多いイベントです。事前に主治医と航空会社に相談してアドバイスをいただいておくと、不安がかなり和らぐのではないでしょうか。

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参加者「ステップダウンをしないとデメリットがあるのか?」

幸山先生「患者さんが『落ち着いている』と考えていても、先生はそう考えていない場合があります。デメリットをそんなに心配する必要はありません」

重症度の評価については、医師と患者で大きな差があります。自覚できる症状が表れなくなると、私たち患者は自分自身の重症度を甘く見積もる傾向があるようです。他の参加者から「コントロールが出来ていても吸入ステロイドを使うのか?」という質問もありました。

「症状がない」「コントロールが出来ている」と考えたとしても、記録を取り続け、定期的に通院することの重要性をあらためて噛みしめました。

専門医の先生方と長時間にわたって話す機会はなかなかありません。他の参加者からの質問とその回答を聞くことで、かなり有意義で濃厚な時間を過ごすことができたと思います。

 

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