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【シンポジウム講演記録】
アトピー性皮膚炎患者の抱える治療と生活への負担

29.11.26  東京フォーラムにて

アトピー性皮膚炎がもたらす患者への深刻な影響 

―社会課題としてアレルギー疾患対策を考える―

アトピー性皮膚炎患者が幸福で尊厳のある生き方ができる社会を作るために

講演2 アトピー性皮膚炎患者の抱える治療と生活への負担

認定NPO法人日本アレルギー友の会

副理事長 丸山恵理

 

私は生後3か月から現在まで続くアトピー性皮膚炎患者です。皮疹は頭皮から足の裏まで全身にあり、重症ですが今はステロイド外用薬などを使ってコントロールしている状態です。

自分のつらい体験を少しでも今悩んでいる方のために役立てて頂こうと、日本アレルギー友の会で25年にわたり活動してきました。

今日は、私の実体験と友の会の活動から見えるアトピー性皮膚炎患者を取り巻く問題についてお話しさせていただきます。

日本アレルギー友の会について

ではまず日本アレルギー友の会についてご紹介させていただきます。

認定NPO法人日本アレルギー友の会は、「アレルギーを越えて。あなたらしい生き方を。」をスローガンに、セルフコントロールをするための情報や、ピアカウンセリング(仲間同士の相談)を通じて、患者が前向きに生きることができるよう、サポートしています。それにより日々の生活に希望を持ち、QOLが向上して自分らしく生きることができることを目標にしています。私たちが蓄積した経験と、知識に基づき、情報を発信していき、「患者」「医療」「社会」をつなぐ役割を果たす会なのです。(活動内容等は省略)

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1アトピー性皮膚炎患者の疾病負荷について 

つぎに、先ほど中原先生よりアトピー性皮膚炎の疾病負荷についてご紹介を頂きましたが、患者の立場から具体的にどのような負荷があるのかについてお話しさせていただきます。

疾病負荷①皮膚のかゆみと痛み
アトピー性皮膚炎のかゆみは表面だけでなく、皮膚の奥から湧き上がってきて、電気が走るように全身にかゆみが広がり、皮膚を裏返して、ナイフでえぐって掻きたくなるような強いかゆみが継続します。

全身にかゆみが移動し、どこでも出現するため、ずっと掻き続け、搔きすぎると皮膚が破れ傷ができたり、炎症があるだけで痛くなります。とくに屈曲部などの皮膚が固くなり割れて痛くなりますし、全身のかゆみから、夜も不眠に悩まされます。一睡もできなくて仕事に行かなければならないのはとてもつらいものです。

疾病負荷 ②外見への劣等感
つぎに負荷が大きいこととして、皮膚が汚くなることがあげられます。搔いているだけならよいのですが、搔けば皮膚はボロボロになります。それが解っていても我慢できないような強いかゆみがあり、掻くために赤く腫れあがり血や掻き傷がついたり、炎症後の色素沈着で皮膚が汚くなる自分の体を見て悲しくなります。人が見たら気持ち悪いだろうと思い、皮膚を露出するような服を着ることには勇気がいります。

当会の相談でも人に見られると恥ずかしく思い、こんな皮膚を持つ自分に自己肯定感が持てない、自分は何もできない、ダメな人間だと劣等感を持つ方が多くいます。

疾病負荷③症状の継続

つぎに負荷が大きいのが、かゆみや症状が継続するということです。慢性疾患でもあり治療して良くなってもすぐにまた悪化するため、どうせ治療してもまた悪化するからと治療に対する意欲が薄れます。医師は「朝晩塗ってください」と一言で済みますが、それを毎日、何年も継続するには高いモチベーションが必要です。また、このまま一生続くのかと不安になり、インターネットなどでステロイドを使う治療がいけないのではないかという情報でさらに不安になり、「脱ステロイド」になったり、完治するという治療法に気持ちが動き「アトピービジネス」に気持ちが揺らいでしますのです。

疾病負荷④毎日のスキンケア

このように、何年も自分で、毎日洗って塗るというスキンケアをしなければいけない負担があります。私のように全身に症状がある場合は、一日2回全身の皮疹の状態を確認しながら適切な外用薬を塗っていなければなりません。薬の選択を誤ったり、めんどくさいからと適当にするとすぐに症状の悪化につながるので、外用薬を適切な量を塗る必要があるのですが衣服がベタベタに汚れてしまいます。たしかに皮膚を覆うようにたっぷりと塗るほうが効果があると実感してますが、おしゃれをしたい時などは少なめに塗るなど自分らしくコントロールしていく必要があります。

疾病負荷⑤悪化要因対策
最後に、悪化要因対策です。アトピー性皮膚炎はアレルゲン体質でもあり皮膚のバリアが弱いものなので、アレルゲン対策や皮膚がかぶれるようなものに対していつも注意が必要です。わたしも、ダニやカビ、ハウスダストなどたくさんのアレルゲンを持っています。様々なアレルゲンや汗などの悪化要因にいつも気をつけていなければいけません。例えば、洗剤やシャンプー、化粧品、衣服などは自分に合うものをみつけていく必要がありますし、自分のアレルゲンを把握し常に対処する必要があるのです。

2アトピー性皮膚炎患者をとりまく問題点

つぎに、アトピー性皮膚炎患者をとりまく問題点について、当会の相談事例からまとめましたのでご紹介します。

①医療不信による重症化

インターネットの情報でステロイド外用薬は大変な副作用がある、体に毒がたまるなどの誤った情報に接するため、ステロイド外用薬を処方する医師の不信感があり、標準治療を否定するために重症化している人が多いという実態が大きな問題です。また慢性疾患であることを理解できないために、完治させてくれる医師や良い治療法を求めていくつもの病院を渡り歩くものの、良くならないため病院に行っても無駄だと思ってしまい医療自体を否定し、治療を中断するために急激な悪化をして苦しんでいる人も多いのです。

②社会生活の阻害と将来への不安

症状の悪化により就学、就業ができないため社会からの孤立、経済的不安を持つ方もいます。また症状があることの劣等感・自信喪失から対人関係への不安、鬱状態、引きこもりに陥ってしまう方もいます。

③日常生活での不自由さ

治療をしていても悪化と軽快を繰り返す病状のために、アレルゲン対策を含め自身で適切な対応が必要ですが、長期にわたる疾患の事実の受入と治療へのモチベーションを維持することが必要ですが、慢性疾患であることの病態を受け入れ、自身で治療をしていく意識を持続することは大変医難しいものです。当会ではピアカウンセリングを通じてサポートしていますが、アトピー性皮膚炎を持ち、身も心も傷ついた方々をどうサポートしていくかは大きな問題です。

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3アトピー性皮膚炎患者を取り巻く問題点の解決方法

①医療不信から脱却するための標準治療の普及があげられます。インターネット等による誤った情報による医療不信を払拭し、皮膚科医による標準治療で症状を改善させることが必要です。多くの情報の中から自身で正しい情報・治療を選択できるヘルスリテラシーが必要となります。

②知識に基づく自己管理が重要です。アトピー性皮膚炎の病態や治療薬に対する正しい知識を持つことにより治療の意義や目的を患者自身が理解し、セルフコントロールしていくことの重要性を広める必要があります。

③医師との信頼関係を構築することが求められます。医師の指導に基づき治療をすることで、治療効果を実感することができます。医師からの適切な指導を受けられる環境と患者からも質問しやすい良好なコミュニケーションを取ることで、治療効果の向上を図ることが大切です。

④最後に、アトピー性皮膚炎患者が幸福で尊厳のある生き方ができる社会を作っていくことです。疾患を自分の中でどう受け入れ、どのように付き合っていくと自分らしく生きることができるのかという心理面でのサポートが求められます。また症状があることでの社会生活での阻害は大きな社会的損失でもあります。就労支援や経済的自立への支援が求められます。そして何よりも、医療対策のみならず、アトピー性皮膚炎を誰もが身近な人に起こり得る社会的課題と捉え、患者支援をしていって頂きたいと考えます。  

 

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