ぼくは、人前に出るのが嫌になるほどのアトピーにずっと悩まされてきましたが、ステロイドを効果的に使ったプロアクティブ療法を試し、いまではほとんどステロイドを使わないで済む状態までになっています。
でもそれまでには、皮膚科を転々としたり、インターネットに載っている脱ステロイド療法をいくつも試したりと、いろんな経緯がありました。
神奈川県 樋原卓人 35才
アトピーとの付き合いは幼少期から。思春期は写真を撮られるのもいやなほどに
子供の頃にもアトピーはありましたが軽症で、最初に明確な変化があったのは、高校2年生の頃でした。
身体の一部にしか出ていなかった炎症が全身へと拡がっていき、顔全体にまでひどく炎症するようになりました。目立つ場所に炎症が拡がったのはそのときが初めてで、写真に写るのがいやで撮影されるシチュエーションを避けてたのを覚えています。
一人暮らしをはじめて一度は改善。しかし転職・引っ越しを機に再び悪化
高校時代に悪化したアトピーでしたが、卒業・就職を機に一度は改善していきます。実家を出て一人暮らしをはじめたところ、一年ほどで症状は収まり、パッと綺麗になったのです。
でも、転職を機に再びアトピーに悩むことになります。
仕事を辞め、引っ越しをしたのがきっかけでした。最終的には頭皮や耳の中、隠部や太もも、足の先までひどく炎症するようになりました。
皮膚科に行っても何も話は聞いてもらえず、ただステロイドを出されるだけ。「どうせ効かないんだけどな」と思いながらもただ診察されるばかり。そんな皮膚科には最初の一度かかったきりで、もう通わなくなってしまいました。
ステロイドによる治療に疑問を持ち、脱ステロイド療法へ
「医者の出す薬を使っても良くならないということは、もしかして治療法が悪いのでは?」 ―― 効果を感じられない治療への疑問が大きくなったぼくは、アトピーについてインターネットで調べるようになりました。そこで出会ったキーワードが「脱ステロイド」です。
“アトピーが治らないのはステロイド自体が悪く、ステロイドを使わずに体の中の毒素を排出すれば良くなる” ―― それは、ステロイドに疑問を持っていたぼくが飛びつくには、十分すぎる言葉でした。
独自の栄養を摂取するやり方、毒素を排出させるやり方など、調べればいくつも出てきます。「水が悪いのでは?」と思って、お風呂にビタミンCや竹炭を入れてみたこともあります。
脱ステロイドを諦め、ステロイドを使った「プロアクティブ療法」という治療法に出会う
もう脱ステロイドは無理だ。―― そう思いはじめたことをきっかけに、2つめの転機が訪れます。「ステロイドで治った人の話はないのだろうか?」と思い、情報を調べ始めることにしたのです。
脱ステロイドについて調べている中で、「インターネットを調べても脱ステロイドを勧めるブログは大量に出てくるのに、ステロイドで直した人のブログが出てこないのは不自然だ」と感じていたのです。調べてみると、ステロイド治療の推移を記事にしてくれているブログを見つけることができました。
このブログでぼくは、「プロアクティブ療法」という治療法があること、そして「プロアクティブ療法による入院治療でアトピーが治っている人がたくさんいる」という事実を知り、衝撃を受けたのです。
「こんなにキツい思いをするぐらいなら、いくら身体に悪かろうが、たとえ寿命が縮まろうが、ステロイドで抑え込んでやろう!」
そしてぼくは、自己流でプロアクティブ療法を始めることにしたのです。
独学でプロアクティブ療法をはじめ、ステロイドを使わないでも済むほどまでに改善!
再びステロイドを使い始めると、みるみる炎症が引いて行きました。もちろん、ステロイドを使えば最初はすぐに効くのはこれまでの経験で知っていたので、効果自体にそれほど驚きはなかったです。
ですが、プロアクティブ療法のやり方にしたがって最初と変わらない量を3ヶ月ほどずっと使い続けてみたところ、これまでのように炎症がぶり返してこないのです。3ヶ月目から徐々に量を減らしていきましたが、それでも炎症がぶり返してくることはありませんでした。
最終的に、治療8ヶ月目には身体へステロイドを使うことはほぼなくなりました。それ以来、ステロイドは多くて月に一度使うか使わないかというところまで改善しています。
「ステロイドをほぼ使わないで済む状態まで持っていけるのか!」
この実体験は、長年ステロイドを使った治療法に疑念を抱いてきたぼくにとって、驚きの事実でした。インターネットでは「ステロイド漬けになったら、ステロイドを使わなくなるとリバウンドするぞ!」と脅すような情報が溢れていたので、「本当にそうなったらどうしよう」と怖かったのです。
「ステロイドは “うまく使えば” 決して怖い薬ではない!!」― 経験から感じていること
幼い頃からずっと悩まされていたアトピーが劇的に改善したのを体験して、いま感じていることが2つあります。
まず1つ目は「ステロイドはうまく使えばけして怖い薬ではない」ということ。
最初は「大量のステロイドを使うなんて!」と思ってました。でも、表面の炎症が消えたとしてもステロイドの使用量を減らさず、使い続けることで奥底に眠っている炎症を抑えることが大切なのです。
最初に多くの量を使うことで、火事で例えるなら「火消しを徹底的にすること」につながります。そうやって徹底的に消火してあげることで、また炎症がぶり返してくるのを防げるわけです。
可能であればこのプロアクティブ療法を試してみてください。全員が治るわけではないかも知れませんが、ぼくのように治る可能性は確かにあります。まだ試したことがない人は、少しでもこの方法に賭けてみてほしいです。
そして、実感していることがもう1つ。それは、「日本の医療業界は問題が山積みだな」ということです。
ぼくは、自分で調べてプロアクティブ療法を試して良くなりました。でも本来、「これは医療側から提案されるべき治療法なのでは?」と思っています。いままでかなりの数の皮膚科に通ってきましたが、子供の頃を含めてステロイドの使用量や使い方を教えてもらった記憶はほとんどありません。
最初からFTUの量を塗ることを教えてもらえれば、脱ステロイドにハマって長い期間アトピーで苦しむことはなかったかもしれません。脱ステロイドを患者が選択するのは医療側にも大きな責任があると感じます。
現在その経験を踏まえ、ぼくは2つのアトピーコミュニティに関わっていて、患者同士での対話を行っています。自分自身も色々な脱ステロイド療法を試した経験があるので、脱ステロイドを信じている方の気持ちはよくわかります。相手を否定せずにゆっくりと話を聞きながら自分の体験を伝えていくことで、何かを持ち帰ってくれる方がひとりでも増えたら良いなと思っています。